移民家族の貢献 4

カリェ・オーチョ通りのウルトラ・レコードが繁盛して、ピネロは新しいショッピング・センターにもう1軒店を出す計画をたてていました。


ヴァルスはしだいにレストラン用品のセールスマンでは物足りなくなって、スペインからエスプレッソの機械の輸入を始めようとボスの説得にかかっていました。


急速に増えているキューバ人のコーヒーへの渇望を癒そうというのです。


しかし、手入れが面倒なこの機械は厄介なしろものだとボスは考えました。


そして冷蔵庫、皿洗い機、ステンレス製レンジその他のもっと大型で単純な仕入れ品にこれを加えることを拒否しました。


在庫管理の上からもその方がいいと思っていました。


そこでヴァルスは友人から〈高利〉で借金をすると、自分でエスプレッソ機械の輸入を始めました。


1台300ドルで買入れて千2百ドルで売り、ほどなく借金を返済することができたのです。


彼は機械の据付けと点検修理をするゴメッツという職工を雇い入れ、ノース・マイアミ・アベニューに店を借りてインターナショナル・イクイップメント・コーポレーションという会社を作りました。


再び借金、2番抵当権、そして少ない支払いなどでやりくりして、マイアミ南西部の1万7500ドルの家に家族を移しました。


その家には1982年まで住むことになります。

移民家族の貢献 3

〈痩身で5フィート・8インチ、13歳、冒険小説を好み、機械のエンジニアを志望〉


・・・と記録に残っているアルマンド・コーディナは、1963年初め孤児院を出てニュージャージー州ポンプトン・レイクのオブライエン家の里子になりました。


オブライエン家にはすでに5人の実子がいましたが、このキューバ人少年のために食卓の席を作ってくれたのです。


彼はニュージャージーの高校に入学しました。


この移民グループの生活はたしかに向上しつつありました。


しかし、彼らは大家族を抱え、ほとんどの妻は職についていなかったのです。


たどたどしい英語、おぼつかない技術、過密な住宅事情、実入りの少ない仕事・・・


そして新聞によると話にならぬほど低い給付金とフロリダの社会福祉制度によるわずかな控除に頼って生活していました。


当時貧困問題はワシントンの官僚政治家の重大関心事でしたが、この移民たちはそれをさらに増大させる存在であり、その年マイケル・ハリントンが『もう一つのアメリカ』のなかで怒りをこめて暴露している〈目に見えない貧困〉と呼ばれる統計上の難民の仲間でした。


事業は蓄えること・・・


つまり消費を見合わせることから始まります。


それは遠くから客観的に見れば貧困と変りはありません。


しかし多少の収入があり、どうにか住む場所もあって、福祉の援助を受けている家族は、たとえどうしても抜け出すことのできない困窮の泥沼にいる場合でも、データ上では問題なく暮しているように見えるのです。


しかし、1964年、彼らが来てからおよそ3年後・・・


この物語に登場する移民4家族はマイアミの経済にめざましい貢献をし始めていたのです。

移民家族の貢献 2

ホセ・ピネロは8番街で中古レコードの行商を始めて数週間のうちに新しい仕事をもうひとつ作り出していました。


30日ほどかかってセット物のレコードを売ってその儲けをためこんでいます。


やがて人通りの多いタワーシネマ近くの小さな店を月百ドルで借りてそれを改装できるだけの額になりました。


その店をハヴァナの下町にある大手デパートにあやかってウルトラと名づけ、映画館の観客や散策の人々を目当てに、人気のあるラテンものの輸入レコードを売り始めました。


また一方、1961年の半ば頃、6人の子持ちの失業銀行員アモウリ・ベタンクアートはココナッツ・グローヴの銀行に職を見つけていました。


マイアミで最も古い3つの銀行の一つでしたが、そこに国際部がないのに彼は目を留めました。


彼は、6週間後には副社長補佐になり、タイム・レコーダーを押さなくてもいい身分になりました。


ラテン・アメリカとの貿易が増えている折柄それを扱うためということもあって、国際部設置の仕事を任されました。


一方、フェリーペ・ヴァルスの妻は女児を出産してマイアミの社会福祉に負担をかけ、家族一人当りの貧困度の統計値をぐっと低下させる結果になりました。


フェリーペはやがて皿洗いの仕事にうんざりして、レストラン用品会社のセールスマンの口を見つけました。


ちょうどリトル・ハヴァナでレストラン用品の需要が高まっている時期でした。


その頃まだマイアミ・ビーチのごみごみした地域に住んでいたドクター・オーユルスンは、外国人医事局の試験の準備中でした。


・・・それに合格すれば、制約はありますが、アメリカ国内で開業できるのです。

移民家族の貢献

ブルッキングス研究所の社会学者ロバート・ベイチュは、〈アメリカ合衆国の歴史上最も迅速で最も遠大な市街地区の改造〉と呼んでいます。


キューバ移民は自分たちが突然引き起した問題を解決したばかりではなく、他の大勢のアメリカ人のために新しい職場をも作り出しました。


沈滞していたマイアミの中心部をよみがえらせたばかりでなく、マイアミの経済全体を変貌させました。


マイアミをラテン・アメリカとの通商の新しい玄関にし、ヨーロッパ、アメリカ合衆国、そして南半球の30か国、3億4200万の人びとの新しい金融の要所に変えたのです。


・・・低迷していた当時の市の経済力にとって厄介なお荷物になるだろうと言われていた移民たち。


彼らは、実際には新しい活気あふれる生活の源泉となり、偏狭な下町の境界を突き破って国際的にはばたく勢力となりました。


供給が彼ら自身の需要を生み出し、満たしてなお溢れ出たのです。


マイアミの終末を予測した悲観的な科学者たちは需要経済における永遠の誤りをまたしても犯していました。


・・・すなわち、人間は元来食べるだけの動物であって知性の持主ではなく、また人間は財とサービスの〈消費者〉であってその生産者ではなく、仕事の利用者であって、新しい仕事の創造者ではないという考えに立っていたのです。

問われるマネジメント能力

今日、『兵書』を持ち出し云々するのはいささか時代錯誤の感なきにしもあらずですが、少々ご勘弁をいただきお読みください。


さて、兵書といえば古来『孫子』『呉子』『六鱈三略』を指します。


『孫子』は中国春秋時代の兵法家孫武の著と伝えられています。


『孫子』は戦争の法則性を研究し、勝つための戦略戦術を追究したものですが、現代社会を生きる知恵の書としても通用するので、現代でも多くの人々に読みつがれています。


『孫子』の謀攻篇に戦いに勝つための五条件が述べられており、そのうえで


「彼ヲ知リ己ヲ知レバ、百戦シテ殆ウカラズ。彼ヲ知ラズシテ己ヲ知レバ、一勝一負ス。


彼ヲ知ラズ己ヲ知ラザレバ、戦ウゴトニ必ズ殆ウシ」


・・・とあります。


この言葉は人口に膳災しており、改めて解釈する要はないでしょう。


戦争といわず、ビジネスにおいても「彼ヲ知リ己ヲ知ル」は基本セオリーなのです。


MR転職情報で仕事を探しているような方なら、当然知っていますよね。


ところでビジネスにおける「彼」とは、経営=外部環境×経営能力で表すことができる外部環境です。


外部環境とは事業のおかれた位置や将来性を柱とし需給関係・競争条件・景気・物価・所得・法規・行政・文化などマクロとミクロの経済・社会の状況をいいます。


それに対し「己」とは経営能力。


経営能力とは経営の要素である人・物・金をいかに調達・運用しビジネスの維持・存続・発展を図ることです。


では、「経営能力」の有無とか長所・短所を明らかにしようとするとき、何に着眼したらよいのでしょうか。

『外国語之研究』

こんにちは。今日もチェストツリーのお陰で元気いっぱいです。


内村鑑三の『外国語之研究』(明治32年)はおもしろい本です。


当時、勉強方法はまだありませんでした。


以下、『外国語之研究』を少し引用してその勉強法などを見てみましょう。

・・・原意を誤たず日本語に翻訳するは実に至難の業なりとす。


そは欧州語と日本語とは全くその原質を異にし、語字の構造、文句の組織に至るまで悉くその趣きを異にすればなり。


風俗を異にし、宗教を異にし、人生観を異にする彼我の間に介して彼の意を我に伝え、我の実を彼に移すの困難はこの業に従肇せし者のみ、よく熟知するを得るなり。


英語のホームを家庭と訳して僅かに原意の半を写すにたるのみ。


ゼントルマンは紳士にもあらず、君子にもあらず、ゼントルマンはゼントルマンにして、これを我が邦人に伝うるの訳語あるなし。


・・・紳士は我にありては盛装する者の称にして、白痴も華族の列に加われば紳士なり。


盗賊も事業に成功すれば紳商なり。


ゼントルマンなる英語の道徳的宏旦と常識的風采とを備うるの意を通ずザ49に最も不完全なる訳語なりとす。


・・・我の「切腹」は名を重んじ命を軽んずるの行為なれども、彼の訳字なるは失意・失恋者の絶望的自殺を意味す。


彼の語を我に伝うるの語なきと同時に、また我の「孝」を完全に言い表わすの語彼にあるなし。


忠臣蔵を英訳して英人はその真意の那辺に存するかを知るに苦しむ。


復警は我にありては徳にして彼にありては罪なり。


彼我思想の隔絶実にかくの如し。


故に宏量ならんと欲せば、外国人の思想をその最善最美の点において採らんと欲せば、吾人は外国語の深き精しぎ研究を要す。


これを約言すれば、彼の語を知らざるは彼を知らざることなり・・・。


人形の家とヒワ 9

私の友人のところの一人娘も、パクパクさんというお化けの友だちがいて、なんでもお父さんがどこかからもらってきて玄関に置いた大きな壷の中に住んでいるのだそうです。


夜になると彼女のところにやってきて、一緒に寝てくれるので、一人でも淋しくないのだといいます。


彼女はよく片腕を不思議な形に曲げていますが、それは姿の見えないパクパクさんを抱いているからです。


両手が必要な時には、そのお化けのパクパクさんを母親にあずけるので、母親もごっこ遊びに参加して、この姿の見えないパクパクさんを、ちゃんとあずかって抱いていてやらなければならないのです。


子どもたちはよく観察すると、こんなごっこ遊びの中で、おとなには見えない友だちをたくさん持ち、幻想を繰り広げて楽しんでいます。


一人遊びの場合もありますが、時には大勢で、インディアンごっこや、怪獣ごっこが始まります。


ウィックス夫人によれば、こうした幻想の友だちも、ある年齢がすぎると次第にあらわれなくなり、雨の日ぐらいにしか家には来なくなって、現実の友だちにかわるのです。


子どもにとって、こうした想像上の仲間は、心を育てるために大きな役割を果たすのです。

人形の家とヒワ 8

それから、ひとりごとを言いながら木馬にまたがり、絵の中の子どもたちと一緒に遠乗りをしているつもりになり、亡くなったお母さんがよく歌ってくれた古いわらべ唄を大きな声で歌いました。


そうすると、不思議なことに、ヒワが一羽、窓の外に飛んできて、中に入りたそうに窓ガラスをたたきました。


トーリーが木馬からおりて、窓をあけてやると、部屋中を飛びまわります。


それから鳥かごの中に入って、さえずったり、とまり木にとまってみたり、砂糖をつついてみたりしてから、また窓の外に出て行ってしまいました。


このあたりから、ごっこ遊びと、トーリーの幻想と、おばあさんが話してくれる昔のことと、現実が交差して、どれが実際にあったことなのかがわからなくなります。


しかし、夢見がちな子どもの心にとっては、現実であるかないかはおそらく問題ではないでしょう。


子どもの心理を生涯かけて観察し続けたユング派の心理療法家のフランシス・G・ウィックス夫人は、子どもたちのファンタジーについて、いろいろ報告しています。


たとえば、ある子どもは、庭にたくさんの妖精の遊び友だちを持っていました。


冬になると、姿の見えない連中がみんな部屋の中に入ってくるので、おとなはうっかり、この子の仲間の上に腰かけたりしないように、気をつけねばならなかったといいます。

人形の家とヒワ 7

ユングは、人の心の深層には、人間の魂の元型のような、お伽話や神話が渦を巻いているといいます。


かつては、老人がいろり端で、昔話を語り、おとなも子どもも、繰り返し、それを聞くことで、豊かな心を育てたといいます。


こんなところに、イギリスの伝統の重さが感じられます。


マザー・グースのようなわらべ唄が今でも子どもの間に伝えられ、児童文学の傑作が生まれる風土も、ここから生まれるのかもしれません。


トーリーは、木馬や木彫のネズミと遊びたくて、いそいで自分の部屋に戻ります。


その時には木馬にやるために、角砂糖を2つもらっていきました。


そして、天井の鳥かごに手がとどくように、椅子をその下までひっぱりだします。


かごの戸をあけて中にネズミを入れると、木馬に角砂糖をやる真似をして、後でネズミのかごの中に入れてやりました。

人形の家とヒワ 6

トーリーの亡くなった母親もリネットという名前だったので、どこかなつかしい気がしました。


しかし、この一家は、代々、同じ名前を継ぐものが多いようです。


たとえば、彼の祖父もトーズランドという名前で、愛称、トーリーとよばれていたといいます。


この絵の中の剣をさげた子どもも、トーズランドですが、この子はトービーとよばれていたらしいです。


そして、この家には、代々ボギスとよばれる庭師が仕えていて、昔と同じように、庭や植木の刈りこみなどをやっていました。


そして、今いるグリーン・ノウのおばあさんは、一人っ子だったので、やはりベッドの傍に置いてあった人形の家の中の、同じ部屋にベッドを4つも入れて、この絵の中の子どもたちと、兄弟のつもりで遊んだということです。


イギリスの古い家には、よく幽霊が出るといいます。


それは代々、同じことをし、同じ名前を継ぎ、昔の話を聞かされて、伝統的なイギリス人のあり方を教わるこうした風習の中から生まれてくるのかもしれません。


そして、昔の、子どもの頃の思い出に生きる老人と、子どもたちのごっこ遊びの中で、昔の人や、そこに伝えられるさまざまな物語がよみがえるのです。

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