人形の家とヒワ 8
それから、ひとりごとを言いながら木馬にまたがり、絵の中の子どもたちと一緒に遠乗りをしているつもりになり、亡くなったお母さんがよく歌ってくれた古いわらべ唄を大きな声で歌いました。
そうすると、不思議なことに、ヒワが一羽、窓の外に飛んできて、中に入りたそうに窓ガラスをたたきました。
トーリーが木馬からおりて、窓をあけてやると、部屋中を飛びまわります。
それから鳥かごの中に入って、さえずったり、とまり木にとまってみたり、砂糖をつついてみたりしてから、また窓の外に出て行ってしまいました。
このあたりから、ごっこ遊びと、トーリーの幻想と、おばあさんが話してくれる昔のことと、現実が交差して、どれが実際にあったことなのかがわからなくなります。
しかし、夢見がちな子どもの心にとっては、現実であるかないかはおそらく問題ではないでしょう。
子どもの心理を生涯かけて観察し続けたユング派の心理療法家のフランシス・G・ウィックス夫人は、子どもたちのファンタジーについて、いろいろ報告しています。
たとえば、ある子どもは、庭にたくさんの妖精の遊び友だちを持っていました。
冬になると、姿の見えない連中がみんな部屋の中に入ってくるので、おとなはうっかり、この子の仲間の上に腰かけたりしないように、気をつけねばならなかったといいます。